<br> 2話<br>



2話




「どうもうちの校風は庶民には敷居が高すぎるらしくてね…。


よほど図太い神経の持ち主でもなきゃ、奨学特待生にはなれないだろうと言われていたんだ。


これで君達を知らなきゃモグリだろう?ね?」


「………。」


「…ハァ;そりゃどーも、ごていねいに。」


「そう!!君達は勇者だ。君、藤岡君!!」



いままで黙っていた環が急にとハルヒの肩に手を置いてきた。



ビクッ!!



「!!」


「たとえ学年主席だろうと、君達は学校一の貧乏人だ。雑草と罵られ下賎の民と蔑まれるかもしれない!!


いや、むしろされるだろう!!麗しの世界へようこそ大貧民よ。」


「いや、別にそこまで…言われるすじあいは。」



それをを無視して環は話を続けた。



「いいじゃないか、貧乏人万歳だ。勇者達にとって大切なのはその無謀ともいえる心意気なのだよ!!」



うぜー、なんなんだよコイツ;



「噂のガリ勉君達が男色家だったのは意外だったが…。」


「へ?;男色!?」


「はぁ!?ボク達男色家じゃないし!!;」


「どんなのが、お好みかな?ワイルド系?ロリショタ系?それとも…。」


「聞けよ!人の話!;」


「この俺にしてみる?いっちゃう?」


「ヒッ!!;」



なにがいっちゃう?だよ。…ただのアホだろ、コイツ;



「自分達はただー…。」



ハルヒは、環に訴えようとした。しかし、また誰かに遮られた。



ちゃんvハルちゃんvちゃんとハルちゃんは勇者なの?


僕、王女様を助けたお話聞きたいなぁv」


「だれがハルちゃんだーッ!!」



さっきのアホよりマシかも?



「ハルヒ、落ちつきな?;」


「うん;とにかく、自分達は探索してただけですから!!」


「おこらりた…。」



小さい子はハルヒに怒られてイジケていた。



行こう!!」



そう言って、ハルヒに腕を引っ張られた。



「うん!;」



早くここから出たい;


二人は本気でそう思った。



『どうも、お邪魔しましー…。』



ガッ…シャァァン!!



ホスト部には嫌な音が鳴り響いた。



「あーあ、校内オークションの目玉予定だったルネの花瓶が…。」


「困ったねぇ…。これ、800万からふっかけようと思ってたんだよねぇ。」



沈黙を破ったのは、同じクラスの双子だった。



『はっ800まん…。』


「あ…あの〜べんしょ〜。」


「できんの?指定の制服も買えない人が?」


「大体何なの、そのダサいかっこ。」


「いや、これは、父のお古で…他に制服っぽいものがなくて…;」



うわぁ〜追い討ちプレーだぁ;はぁ…あの賭けさえなければ800万なんてすぐに払えたのに…。



「どうする?環。」


「あー…こういう諺をご存知かな?君、藤岡君。」



雰囲気が急に変わったような気がした…。



「【郷に入っては郷に従え】【金が払えなけりゃ体で払え】!!


今日から君達はホスト部の犬だ!!」


「えっ!?」


「あ…。」



ーお父さん、お母さん、私は今日ほど貴方達を恨んだことはありません…。(多分)


てか、今からでもいいんで賭けの内容変えてください。


私はただ、3年間楽しく過ごしたいだけなんです;


はぁ…久しぶりに、ハルヒに会えたのに…。



ーあんまりです。


お母さん、貴女亡き後金遣いの荒い父との生活苦節10年。


自分は、と一緒にホスト部とかわけのわからん軍団につかまってしまいました。




………




「環くんなら、夏は何処へ連れてってくれる?」


「君の行きたい所ならどこへでも。」


「環くんの好きな音楽は?」


「君が好きだと思うものを。」


「今日はケーキを焼いてきたのv食べてくれる?」


「君が食べさせてくれるなら。」


「やだ、環くんvもー。」


『………。』


「あっはは、そんでこいつはってば徹夜で作った


データ寝ぼけて初期化させちゃってさー。」


「光!!その話は!!//」


「あははは、馨くんかわいーvv」


「パニック起こして俺に泣きついてきてー…。」


「光!!」


「ひどいよ、みんなの前で…そんな話。」


「馨…。ごめんよ馨…あの時のお前があんまり可愛かったから…つい…。」


「光…!!」



ヒシ!



二人は、抱き合った。次の瞬間。



「キャー麗しき兄弟愛よ!!ステキ!!」



と、女子達の絶叫が聞こえた。



「なんで!?なんで、あんなので喜んでんの!?」


「なぜ、泣いて喜ぶ女子…。よくわからん世界だ。」



とハルヒが不思議に思っていると、鏡夜先輩が説明してくれた。



「各自の特性を生かし、お客様のニーズに応えるのが方針でね。


ちなみに、環がうちのナンバー1だよ。」


「うそ!?あんなアホが!?…信じらんない;」


「あんなんが、ナンバー1?げっ指名率7割!?」



この結果を聞き、二人は本気で驚いた。



「当分君達は、雑用係りだ。逃げるのは自由だが…我が家には有能なスタッフが揃っててね。


…ざっと100人ほどね。君達パスポート持ってる?」


『ヒッ!!』


「(悪魔の笑みだ…。)」



あの人には、絶対逆らわないぞ。



はそう、心に誓った。



「そーよvしっかり800万円分働いてね。そんな格好じゃ女の子にモテないぞ!!」



そう言って、環がハルヒの首に息を吹きかけた。



「ひゃっ」



うわっきも!!



「やめて下さい;」


「おや?これも立派なテクの1つなのに。」


「基本的にそーいうの興味ないんです。大体どうでもよくないですか?


男とか女とか外見とか、なんでこんな部があるのかもさっぱり…。」


「…まぁ、残酷なものだよねぇ…。


神は時として器も中身も完璧な人間を生み出してしまうようだからねぇ…。


いや、自慢する気はないんだけどね!!」



全然わかってないじゃん…;



「(…ああ…;この人は…;)」


「君達がそうして、自分を慰めたい気持ちはよくわかるさ…!!


そうでもなきゃ、生きていけないものね…!!」



…おいおい、他の人は知らないけどなんでボク達まで;



は顔が軽く引きつるのを感じた。



「(何ていうんだっけ、こういうの…。


めんどう…じゃなくて、もっとこう的確な…。)あ!!そうか。」


「ああ!!理解してくれ…。」


「【うざい】だ。」



ピシ



ハルヒの一言に、周りが一瞬止まった。


でもすぐに…。



「ハルヒ、もっと言っちゃえー!!」


「すげー!!やっぱ強者だな、おまえ〜!!図太い庶民!!!」


「あはははは、あそこまでダメージ与えれる奴そうはいないって!!あの人に!!ぎゃはははははは。」



双子が言うように、環はすみっこの方で落ちこんでいた。



「…なにやら、はげしく落ち込ませてしまった…。思った事を言ったまでなのに…。」



ちょっと、不本意だけどハルヒはキゲンをとりに向かった。



「あ…;あの〜須王せんぱ…。」


「【キング】俺はここじゃそれで、通ってるからそうじゃなきゃ君なんて知りません!!」


「ハァ…じゃあ…;キン…。」


「あーちょっと、邪魔ー殿下ー;」


「サボってないでよー。殿ー;」


「環、指名客たまってるぞ。」



…だれも呼んでないじゃん。



ガチャ



環のことを誰もキングと呼んでないとわかる頃、部室のドアが開いた。



「ごめーん、遅れた。」


「キャーハニーくんvモリくんv待ってたのよー!」


「ごめえん崇のかけもち待ってたら、つい寝ちゃってー。


んー、なんかまだねむーい…。」



キュン



ハニー先輩が眠そうに目を擦ってるのをみて、女の子達が胸をときめかしていた。



「あれ、初等部の子じゃないの?」


「そして、あの布面の人は一言もしゃべってないんですが…。」


「何を言う、ハニー先輩は部内最年長だぞ。


ああみえて秀才でいらっしゃる。モリ先輩はかもくさがウリなんだ。」



人は見かけで判断できないなぁと二人は思った。



………




「はぁ…久しぶりにハルヒと会えたのに;」


「ホントにね;それに、静かな場所を探してただけなのにね。」


「なんで久しぶりなの?それに、どっちかの家に行けばいいのに。」


「それは、ボクが留学してたからです。」


「おや?それじゃあ、久しぶりの再会じゃないか。」



…だからそうだって、言ってんじゃん;



「自分も昼間は、父が愛人連れ込んでるもんで。夜の仕事なもんですから;」


「おお…;父親とうまくいってないわけか、それで学費ももらえんと;」


「あ、イエ、仲は良いんです。金遣い荒いけど。


ただ、できるだけ負担をかけたくないというか、10年間男手ひとつで育ててくれたわけですし。」


「ハルヒ、相変わらず偉いね。」


「ありがとう。だから、自分でできる事はと思ってー…。」


「ふうむ…。そういう境遇はやはり、あわれというものだろうね?」


「は?イヤ別に…。」


「そして、やはり主食は大根メシなのか?」


「は?」


「へ?なんでそうなるの?;」


「貧乏のあまり奉公に出されそうになったり、


イジワルな金持ちにこきつかわれ泣きぬれて眠った経験が!?」



ガシッ!



肩をつかまれたハルヒは…



「いつの時代の話ですかッ!!」



軽くキレていた。



「イヤ、すまん。最近【おしん】の再放送にハマってたものだから…


まさか、君がモデルとは知らず…。」


「ちがいます」


「ストーリーまるで違うし;」


「よしハルヒ、!!手に職だ!!」


『ハァ!?』


「君達の容貌では無謀かもしれんが、この俺が徹底的に指導してやろう!!


そうだな、君達ならせいぜい…100人!!」


「………ッ;;」


「ヒッ;;」


「100人の指名客を集められたら、ついでに800万もチャラにしてやろう!!


そして、輝くおしん界のホスト星となるのだ!!」


『い…いやだあああ、雑用のがマシだああー』



部室に、とハルヒの叫び声が響いていた…。









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